差し歯

患者さんから受ける質問に、「この歯は差し歯ですか?」とか「この歯は、この後で差し歯になるのですか?」というものがあります。でもこの「差し歯」という言葉、なかなか難しいのです。

同じものを指していても、一般の方々が使う言葉と歯科医が使う言葉が違うことは珍しくありません。でも、例えば「入れ歯」といわれれば義歯のことだな、とか、「銀の被せもの」といわれればFMCのことだろうな、などとおおよその想像はつきます。

ですが、「差し歯」はその人によって指し示すものが違うのです。

「差し歯」をいちばん厳密に定義するなら狭義の歯冠継続歯、根だけが残っている歯に差し込むピンと作り物の歯を一体構造として製作して歯に取り付けたもの、ということになるでしょう。もう少し範囲を広げるなら、先にピンだけを差して下部構造を作り、その上に歯の形の被せものを後で取り付けた場合も含まれるかもしれません。

でも、完全に被せてしまってある歯のどこまで元々の自分の歯だったのかとか、根の中にピンを打ち込んであるのかどうかは、我々歯科医でも自分で作っていない限りレントゲンを撮らないとわかりません。ですのでピンを使っていない被せものも含めて全て「差し歯」と呼ぶ患者さんもおられて、そうなると「差していない差し歯」ということになって、良くわからないことになってきます。
まあ細かいことばかり言っていても仕方がないのでその場の流れで判断していくのですが、返答に困ってしまう場合もあります。