入れ歯と歯磨き粉

食後や寝る前には、入れ歯を外して洗っていただくのがお手入れの基本です。その時に、少しでも入れ歯がきれいになるようにと思って歯磨き粉をつけて洗う方もおられると思います。

しかし、歯磨き粉は天然の歯を洗うために作られたものなので、研磨剤など入れ歯に好ましくない成分が含まれていることが多いです。研磨剤で洗ってしまうと入れ歯の柔らかい部分に細かい傷がつき、そこに汚れが残ったりして細菌が繁殖する原因になります。

ですので、入れ歯を洗う時は歯磨き粉をつけないブラシで洗うようにして、薬剤による洗浄は専用の入れ歯洗浄剤を使ってください。

歯石を取らないでおくとどうなるでしょう

口の中で繁殖した細菌の塊である歯垢に、唾液の中の無機質が結合したものが歯石です。いったんついてしまった歯石は歯ブラシでは取れず、歯科医院で除石処置をする必要があります。

歯石の表面は凹凸があり、細菌の温床になります。また、機械的にも歯肉を刺激します。そのため、歯石がついたままの状態を放置すると歯周病が悪化する原因になります。

歯石とは何でしょう

食後に口の中に残った食べかすをエサにして繁殖した細菌の塊を歯垢といいます。

歯垢は歯ブラシでしっかりと磨くことによって取り除くことができますが、残っている部分があると数日の間に唾液の中の無機質と結合して軽石のような硬いものに変化します。これを歯石といいます。

歯石になってしまうと歯ブラシだけで取り除くことは難しく、歯科医院で処置してもらう必要があります。超音波スケーラーや手用器具などで取り除いてもらいましょう。

歯の寿命と健康寿命

厚生労働省の定義によれば、健康寿命とは「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」とされてます。
令和元年のデータでは日本人の平均寿命は男性で81.41歳、女性で87.45歳ですが、健康寿命は男性で72.68歳、女性で75.38歳、したがって健康寿命と平均寿命の間には男性で約9年、女性では約12年の違いがあるとされています。(参考:「第16回健康日本21(第二次)推進専門委員会」資料)

誰でも健康で長生きしたいと思うのは当然ですが、この健康寿命と歯の健康が大きくかかわっているのをご存じでしょうか。

愛知県知多半島の65歳以上の住民を4年間追跡した研究では、歯が多く残っている人や、歯が少なくてもきちんと入れ歯を入れている人は認知症発症や転倒のリスクが少なくなることがわかっています。具体的には歯が少なくなって入れ歯も使用していない人は20歯以上残っている人やきちんと入れ歯を入れている人に比べて点灯するリスクが2.5倍、認知症発症のリスクが最大1.9倍になると報告されています。

また、兵庫県香美町の報告では80歳で20歯以上を保持されている高齢者の方々は、そうでない同年齢の方々より自家用車や携帯電話の所有率が高いという結果が出ています。(以上参考:日本歯科医師会テーマパーク8020:https://www.jda.or.jp/park/relation/teethlife.html#1)

つまり、元気な高齢者でいるためにはできるだけご自分の歯を保持すること、また歯が少なくなってもきちんとした入れ歯などでお口の機能を維持することが重要となってきます。どうかかかりつけの歯科医院で定期的なチェックを行い、処置が必要な場合は早めに処置し、健康寿命を延ばしましょう。

歯垢とは何でしょうか

歯垢(プラーク)という言葉をお聞きになったことがあると思います。歯の汚れという意味では一緒ですが、厳密には食べかす(食渣)と歯垢は違います。

食べかすは、食べたものの一部が歯や口の中にそのまま残ったものです。それに対して歯垢は食べかすをエサにして繁殖した細菌の塊で、ネバネバと歯の表面に粘着しているので口をゆすぐだけでは取れません。

歯垢はむし歯や歯周病(歯槽膿漏)の大きな原因になるので、しっかり歯磨きをして除去しましょう。