どの歯が痛みますか

学生時代、大学の授業で「痛みの原因となっている歯がどれか見つけるのは、とても簡単か、とても難しいかどちらかなんだよ。」と習った覚えがあります。どういうことでしょうか?

患者さんの口の中を目で見て大きなむし歯を見つけたり、歯茎が明らかに腫れていてそこを触ると痛い場合。これは話が早いですね。でも、表面上は明かな異常が見えないのに痛みがある場合。これは意外に難しいんです。

患者さんにしてみれば、「だって痛いのはここですよ。だからこの歯に何かあるはずです。」とおっしゃるのですが、その場所が間違っている確率が半分近くあるのです。実は隣の歯が原因の場合もあるし、2~3本離れた歯が原因の場合もあります。時によっては上下が違っていて、どうしても上の歯が痛いとおっしゃるのに下の歯が原因の場合もあります。どうしてこういうことになるのでしょう。

これは歯の痛みを脳に伝える神経が一つで、強い痛みの場合はいろんな歯を同時に痛く感じてしまうためです。だから患者さんが「ここです」とおっしゃる歯をいきなり削らずに色々と検査をする必要があります。

痛い歯を早くなんとかしてほしい患者さんにまだ検査だと言って申し訳ないのですが、どうかお許しください。

歯科と金属アレルギー

 指輪やピアス・腕時計など金属が肌に触れるものを身に着けていると、それが原因でアレルギーを起こし、その場所や全く離れた場所に皮膚炎などの症状が出る方がおられます。銀歯や入れ歯など、口の中に入っている金属がその原因になることもあります。

 皮膚科やアレルギー科にて皮膚のパッチテストや血液検査を行い金属アレルギーと診断された方の歯を治す場合、アレルギーの対象になっている金属を使うと症状が悪化する可能性があります。金属にもいろいろな種類がありますので、そのような方の場合はテストで安全と思われる金属を使うか、樹脂などの金属以外の材料を使って治療する必要があります。

 また、現在はいっている金属の歯が原因として疑われる場合は、アレルギー担当医と相談して金属を外し、経過を観察することもあります。

 金属アレルギーと診断されている方、また、その可能性が心配な方は治療前にご相談ください。

歯周病とタバコ

タバコにはいろいろな害がありますが、歯周病(歯槽膿漏)にも悪影響があるのをご存知でしょうか。

タバコに含まれる一酸化炭素は組織への酸素供給を妨げ、またニコチンには血管を収縮させる作用や免疫を阻害する作用があります。煙が直接口の中に作用して防御機構を弱らせ、さらに体に吸収されてからも血液を介して影響します。

また、ヤニが付着することによって歯の表面に凹凸ができ、細菌が繁殖しやすくなります。これらが全て歯周病悪化の原因になります。

なかなか困難なことであるのは承知していますが、お口の健康のためにもできれば禁煙をお勧めします。

むし歯ってなんでしょう

「むし歯」という言葉はよく使われますが、どういう病気を言うのでしょうか。「歯に穴が開いたらむし歯」、「歯に黒いところができたらむし歯」、「歯が痛くなったらむし歯」…。いろいろなご意見があると思いますが、厳密にはどれも少し違います。

もちろん、むし歯が原因で歯に穴が開いたり黒くなったり、痛くなることもあります。でも、そうならないむし歯もありますし、逆に他の原因でそういう症状が出ることもあります。

「むし歯」とは歯科用語では「う蝕」といいます。どなたでも口の中には細菌が生息していますが、その細菌が食事に含まれる糖分を餌にして酸を作り出し、それによって歯が溶けてしまった病気を「むし歯」というのです。